おとめ倶楽部

キラキラオトイメロイメモリ

No.5

returns for me

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原作:刀剣乱舞
種別:夢小説
文字数:5307文字
大俱利伽羅×女審神者

 全国の審神者のみなさん、こんにちは。
 みなさんの本丸では、どのようにバレンタインを過ごしますか?
 ちよこ大作戦で忙しい審神者さんもいれば、恋刀との甘い時を過ごす審神者さんもいて、逆にいつもと何も変わらないなんていう審神者さんもいるのでしょう。
 
 私は毎年刀剣男士のみんなに、日頃の感謝の気持ちをこめたクッキーを焼いて配っています。
 男士によってはお返しを用意してくれていて、それも一つの楽しみ。昨年は燭台切さんがプロ級のガトーショコラを作ってくれたり、静形さんが小さなマドレーヌを焼いてくれたり、薬研くんが箪笥からお煎餅を出してくれたり……。
 バレンタイン前の厨は普段料理をしない刀も集まっていて賑やかです。
 
 さて。朝からクッキーを配り歩きますが、既に乱ちゃんから200年前頃に流行ったらしい手作りの平成女児チョコを頂いてホクホクです。毎年何か作ってくれる彼とチョコレート交換をすることで、バレンタインの始まりを感じます。

「主。おはよう」ただ今前方から歩いてきたのは鶯丸さん。
「おはようございます、鶯丸さん」
 朝が早い彼のことですから、もう既に朝食を済ませて私室か縁側かに戻る帰りなのでしょう。
「どうぞ、ハッピーバレンタイン」
 紙袋からクッキーを取り出して手渡します。鶯丸さんにぴったりの緑色のリボンでラッピングしたものを選びました。
「……主は毎年変わらないな」
「はあ……」
 鶯丸さんに余計なような一言を添えられポカンとしますが、彼のおじいちゃんのような温かな笑みを見れば悪気がないことはわかります。こういう刀なのです。
 彼は「ありがとう。今日の茶請けにする」と言って立ち去りました。

「…………」
 鶯丸さんには毎年変わらないと言われた私ですが、実は今年は一味違うのです。ええ、考えるだけでドキドキします。

 私には好きな刀がおります。
 その刀に、特別なチョコレートを用意しました。

 自室に備えられた厨でこっそり作ったハート型のチョコレート。特別な箱に特別なリボンで包んで、かわいい専用の紙袋も用意しました。
 ざわざわした乙女心がシミュレーションという名の妄想を何度も繰り返しました。彼は無口で私も口が上手い方ではないので、ちゃんと渡せるかなとか……。とても優しい刀ですから受け取ってくれるとは思うのですが、「慣れ合うつもりはない」と断られてしまう可能性も……そう、好きな刀とは大俱利伽羅くんなんです。
 
 告白をしてあわよくばお付き合いしたいとか、そんなことまでは望んでいません。この気持ちを形にして、ついでに伝えられたらという自己満足から始まりました。
 きっと彼を困らせてしまうでしょう。私が本丸の主であると言う立場上、恐縮させてしまうかもしれません。だから渡すのが怖い。
 でも、好きって気持ちをたくさんたくさん込めているうちに渡さずにはいられなくなってしまいました。渡せなかったらチョコレートが可哀想ですし。
 いつ渡せるのかわからなくて今は冷蔵庫に待機してもらっていますが……。広い本丸でいつ会えるのかなんて、そんなの運です。呼び出すのはかなり恥ずかしいですし、やはりいつ遭遇してしまってもいいように、自室へ戻って取ってきましょうか……。
 
 そう思い至って廊下の途中で振り向いたところに、男士が二振りいました。
「おぉ主! おはよう」
「おはようございます。鶴丸さんに、……大倶利伽羅くん……」
 ああ、運が悪いです。朝から会えた嬉しさはあるけれど、チョコレートは今手元にありませんもの。
 まだ会話もしていないのに緊張で顔に熱が集まります。
 大俱利伽羅くんが「おはよう」と返してくれました! すごく嬉しいです。最初は挨拶もままならなかった彼とこうして話せることを想うとそれだけでもう幸せです。いや、こんな調子で私は大丈夫なんでしょうか。

「なぁ主、俺たちには無いのか、アレ。泣くぞ? 伽羅坊が」
「おいやめろ。適当言うな」
「あっごめんなさい、ありますよ。はい、どうぞ」
 一人舞い上がっていたらクッキーの存在を忘れていました。鶴丸さんが言うように大俱利伽羅くんが私からのバレンタインを求めてくれていたらいいのですが……。私に気を遣いつつ面倒くさそうに対応しているのを見ると、あまり期待できませんね。
 大俱利伽羅くん、初めてのバレンタインの時は慣れ合いを厭って燭台切さんに言われるまで受け取ってくれなかったんですよね。大俱利伽羅くんとのバレンタインの思い出はそれくらいですが、懐かしいものです。
「今年もクッキーか。少々驚きが足りないがキミが作ってくれたものだ、有難く頂こう」
「……あぁ」
 大俱利伽羅くんにだけ何も渡さないわけにもいかないので、2つ私は手渡しました。
 確かに驚きを渇望する鶴丸さんには特に変わり映えのないクッキーなどつまらないかもしれません。ちゃんと有難がってくれているのが彼の優しさですね。……私はもしかしたら、大俱利伽羅くんのことばかり考えてしまっているうちに本丸みんな分のお菓子への創意工夫を怠ってしまったのかもしれません。これは本丸の主としていけません、どうしましょう。
 そう考えているうちに鶴丸さんが「じゃあな」と言ったので、二振りを見送りました。
 
「……行っちゃった」
 いけません、また大俱利伽羅くんのことばかり。
 大俱利伽羅くんが遠ざかります。切ないです。今日もう一度会う機会はあるのでしょうか……と思ったら、なんと廊下を曲がっていったはずの大俱利伽羅くんが戻ってきました! 一体なんでしょう……? だめです、勝手にドキドキしてしまって止まりません。
「おい」
「は、はい」
 大俱利伽羅くんって「おい」とは言いつつ声色が優しいんですよね。好きです。
「……今日の出陣予定は」
 ああ、ただの業務連絡でしたか……。そりゃそうです。でもここで大俱利伽羅くんに出陣してもらえば、また今日会う機会が作れることに気がつきました。
「大俱利伽羅くんは何か予定がありますか?」
「少し……出かける」
 あ、あら。そうなんですね。それは……残念ですが仕方ないです。私は編成には入れないでおくと言うと大俱利伽羅くんは再び去っていきました。
 大俱利伽羅くんの予定って、なんでしょう。……どこかの誰かとデートするとかじゃないといいのですが……。
 そうは思っても、私はもう大俱利伽羅くんを好きな気持ちが止められません。こんなんじゃ主失格と誰かに言われても仕方ありません……。

 
 本日のおやつは、燭台切さんからのフォンダンショコラでした。本丸みんなに振舞える分用意するだけでとんでもないことですのに、味は美味しく見た目も美しく正しく完璧です。かっこよくキマっています。
 出陣はおやつの時間前に終わらせてしまったのでこれからどうしようかと思っていたら、足が玄関に向かっていっておりました。
 あまり詮索しようとするのはよくないのに、外出簿を覗いてしまいます。本日の日付を見ると、何人か外出しています。一緒に甘味処へ行ったであろう前田くんと大典太さん、清麿会があると言っていた清麿さん、そして大俱利伽羅くん。彼はどうやら万屋へ行ったみたいで、もう帰ってきているようでした。万屋と意外に早い帰宅と言うことはデートではない気がします。安心です。
 玄関に居ても仕方ありません。自室へ戻ってチョコレートを取ったら、大俱利伽羅くんを探しましょう。


 ……びっくりです。自室の前で大俱利伽羅くんと鉢合わせました。
「どうしてここに、大俱利伽羅くん?」
 こ、声が上擦ってしまいました。恥ずかしいです。
「あんたに用があるからに決まっているだろう」
 あんた、なんて言われてしまいました。くすぐったいです。一般的に喜べる呼称でない気もしますが、私は嬉しいです。
「よ、用って、なんでしょうか……?」
 今日の大俱利伽羅くんは自分から私と関わりに来てくれています。それがバレンタインの日であるというだけに、私の心臓は爆発しそうなほど大きく鳴っていました。
「……受け取れ」
 そう言われて手渡されたのは、彼の背中に隠されていた3本の赤い薔薇でした。
 信じられません。大俱利伽羅くんが、お花をくれるだなんて! これは夢でしょうか。夢に違いありません。
 どうして薔薇なんでしょう。私は明るくないですが、薔薇、しかも赤いものなんて熱情的な花言葉に違いありませんのに。3本というのにもきっと大俱利伽羅くんからのメッセージがあるはずです。どうしましょう。どういう意味でこれを渡してくれているんでしょう。
「……おい」
 なかなか受け取らない私を見て大俱利伽羅くんが痺れを切らします。
「う、受け取れません。どうして大俱利伽羅くんが私にお花を……?」
「バレンタインの礼だ」
「なるほど……」
 礼、ということは特に本命ではないのでしょうか……。クッキーはみんなにあげた義理と感謝ですものね。
 でも、あのクッキー1包みに対してこんな素敵なものをくれるなんて流石伊達者です。
「ありがとうございます。大切にしますね」会話が終わるのが惜しくて私は続けます。「もしかして今日の外出って、これを買ってきてくださっていたんですか?」
「ああ……」大俱利伽羅くんは生返事をします。 どうしたのかと思ったら、「チッ」と大俱利伽羅くんに舌打ちさせてしまいました! 反応がよろしくなかったのでしょうか!?
「えっと……大俱利伽羅くん……?」
 ただ正解もわからないので私は戸惑うことしかできません。
 そして次の瞬間、大俱利伽羅くんは私の目をしっかり捉えて言いました。
 
「あんたが好きなんだ」
 
「──え」
 すみません。聞き間違いかもしれません。頬をつねりますが確かな痛覚があります。今日は信じられないこと続きです。
 
「聞こえなかったのか。あんたが好きだと言っている」
 
 大俱利伽羅くんは何も返事しない私に、一歩近づいてきてもう一度好き、と告げました。私の顔はぶわっと赤くなります。
「あの、でも、私、バレンタインのお礼って、クッキーしか渡してないのに」
 混乱で言いたいことが言えません。大俱利伽羅くんごめんなさい。でも大俱利伽羅くんはそんな私に呆れもせずに言います。
「俺があんたを好きで渡したかったから渡す、それだけだ」
 彼らしい発言ですがどこかで聞いたような言葉のひっかかりがあります。
 ──そうだ、私のチョコレートです!
 まるで逃げるように自室へ駆け込んだ私は急いでチョコレートを取り出し紙袋へ入れます。
 急いでいるのと緊張しているのとで上手く呼吸もままならないです。
「──おい、落ち着け」
 あ、慌てていたので大俱利伽羅くんを置いて言ってしまっていました……。彼は私を追いかけて部屋に入ってきたのか、背後から私の耳元に囁いています。近すぎです!
 余計落ち着けない私に向かって「深呼吸しろ」なんて言う大俱利伽羅くん。あなたのせいなのにと思いつつ大俱利伽羅くんが言うなら大人しく深呼吸します。

「……あの、私も渡したいものがあって」
 少し落ち着いた私は話しはじめますが、真後ろに大俱利伽羅くんがいて振り向けません。大俱利伽羅くんはそのことには構わず、紙袋を持った私の手に彼自身の手を重ねました。なんということでしょう、触れ合っています!
 大俱利伽羅くんはそのまま紙袋からチョコレートを取り出させると「……フン」と満足そうに笑いました。息が耳にかかるともうどうすればいいかわかりません。チョコレートを溶かしてしまいそうです。
「私も……」
 言わなくてはいけません。あんなに伝えたかった気持ちなんですから。彼が期待しているのがなんとなくわかり、恥ずかしいです。
「私も、大俱利伽羅くんが好きなんです」
「……ああ」
 大俱利伽羅くんは満足そうに呟くと、一度チョコレートから手を離し、全身で私を後ろから抱きしめました。
 彼に触れている部分が大変熱いです。先ほどの深呼吸がもう無意味になってしまいました。
「俺も、好きだ──」


 あれから。晴れてお付き合いを始めた私たちですが、本丸のみんなも快く受け入れてくれました。
 鶴丸さんは驚きに歓喜し、燭台切さんや太鼓鐘くんは大俱利伽羅くんを称えました。
 私に後ろ指をさす刀がいなくて、その温かさにとても救われました。
 
 そういえば大俱利伽羅くんが贈ってくれたあの赤い薔薇は「情熱的な愛」「あなたを愛しています」、3本の薔薇は「告白」を意味するそうです。きっと意味を知っていたらもっと上手く反応できたんですね。
 大俱利伽羅くんは告白こそ情熱的でしたが、その後はすぐ緊張してしまう私のペースに合わせてくださっています。
 今も、本丸の庭をお散歩しながらやっと初めて手を繋いだところです。この段階まで来るのはなかなか骨の折れたことでしょう、とても機嫌が良さそうです。
 亀の歩みに付き合ってくれている彼に感謝したくて「ありがとう」と言えば、「俺はしたいことをしているだけだ」と返ってきます。
 
 それでも何か返したい私は、なんとか勇気を出します。
「大俱利伽羅くん、大好きです」
 すると彼は不意をつかれて目を丸くしますが、フッと柔らかく笑って、握っている手の指を絡めてきました。
 最近にしては珍しく私の心臓が跳ねます。そして、彼に大事にされているのを実感しました。
 私はきっと、世の審神者さんの中で一番の幸せ者です。

あとがき
バレンタイン10日目、やっと完成──。
バレンタイン大好き人間故、他のバレンタイン書いてたらこっちも遅くなっちゃった。
私が大俱利伽羅くんにチョコ貰いたい!と思いながら書きました。最終的にチョコではなくお花になりましたが…🥀小説内で描かれている女審神者は私ではありませんが、刀剣乱舞への自己投影感がなんとなく映っている感じがします。
地の文を敬語の審神者視点にすると書きやすくていいですね♡
話しの運びの拙さはあるけど、結構自分が満足できるものになったので★★★★★

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