キラキラオトイメロイメモリ
No.7
めちゃめちゃめちゃめちゃ嬉しいです❣
2026.3.1
LIST TOP
どうぞお気軽にメッセージください☺︎(特殊文字や機種依存文字は文字化けしてしまうことがあります😭)
種別:男女CP小説
舞台設定:『赤ずきんちゃん』
文字数:9333文字
レオン×ミリア
ある村に、猫ずきんちゃんと呼ばれる小さな子どもがおりました。
いつも猫耳の付いた頭巾を被っている、ミリアという女の子です。
その子はまだ8つばかりでしたが大変愛らしい見た目でおしゃれさんでした。歌を歌うことが好きでよく皆に歌ってきかせてくれました。少しおませさんで調子に乗りやすいところがあって、まだまだ心配のかかる子どもでしたが、その分周りの人々から大切にされておりました。
今日も、猫ずきんちゃんのお母さんがお仕事で忙しい代わりに、近所の沙羅さんというお姉さんの家に預けてもらっていました。
沙羅さんは専ら犬のサフィーを助手に実験をしておりましたから、猫ずきんちゃんは仲良しの猫であるガーネットとサンゴと歌の練習をしたり遊んだりしておりました。
お昼ご飯を食べた後、沙羅さんの電話に着信がありました。数回問答した後、沙羅さんは猫ずきんちゃんに近づいて
「猫ずきん。あなたのお母さんが忘れ物をしてしまったみたいなの。私には今手が離せない実験があるから、代わりに届けてくれないかしら?」
と言いました。
「いいわよ! ママのお仕事が見られるなんてとっても楽しみ!」
猫ずきんちゃんはそう喜んで支度すると、お母さんが忘れたという衣装を沙羅さんから預かりました。沙羅さんは「ごめん猫ずきん、おつかいを頼んで……。道中の森には危険なオオカミがいるかもしれないから、絶対立ち入らないように。寄り道はしないように、知らない人にも付いていかないようにすること」としっかり言いつけます。猫ずきんちゃんも「ええ、わかったわ! 私に任せて!」と張り切って、ガーネットとサンゴを引き連れ出発しました。
沙羅さんは「大丈夫なのかしら……」と、不安げに猫ずきんちゃんを見送ってから急いで実験に戻りました。
猫ずきんちゃんは極めて順調に村を抜け、いよいよ舗装されていない道に入りました。
暗い森が脇目に見えますが、気にすることなく歩き続けます。ガーネットとサンゴと楽しく話していると、不意に森から物音がしました。
「な、何……?」猫ずきんちゃんとガーネットとサンゴは身震いします。後ずさっているうちに尻もちをついてしまいました。猫ずきんちゃんを守らんと二匹が前に出ました。
しかし、森から出てきたのは男の人でした。猫ずきんちゃんより一回り年上の、優しそうな雰囲気の人です。猫ずきんちゃんは一瞬で彼のかっこよさに目を奪われます。ガーネットとサンゴも、彼の連れる一匹の猫の凛々しさを見てハートの目になりました。
男の人の方も猫ずきんちゃんに気づくと声をかけてきます。
「大丈夫? ごめん、驚かせてしまったな。ほら、立てるか?」
差し出された手を取り立ち上がると、猫ずきんちゃんはお礼を言います。
「ありがとう……。でも、どうして森から出てきたの?」
危険な森からどうしてこんなかっこいい人が出てきたのか。それが気になってしまった猫ずきんちゃんは彼に質問します。
「ああ、俺は猟師で、悪いオオカミを捕まえるのが仕事なんだ」
そう言いながら男の人は猟銃を猫ずきんちゃんに見せてみせます。
「そういう君は、こんなところでどうしたの?」
「ママの忘れ物を届けるおつかい中なの」
「へえ、えらいじゃないか」
優しく目を細めて笑う猟師さん。猫ずきんちゃんは彼のことがもっと知りたくなってしまいました。
「私ミリア。あなたは?」
猫ずきんちゃんは普段なら、自分が猫ずきんと呼ばれていることも併せて紹介したでしょう。でもそうしないのは、彼には名前で呼んでもらいたいと思ったからでした。
「ミリアか。俺はレオン。こっちは相棒のディアンだ」
「よろしくな」と挨拶するディアンに、ガーネットとサンゴも名乗って返します。
猫ずきんちゃんは「レオン……」と教えてもらった名前を口に出します。彼にぴったりの、強そうな響きがしました。
「町の方に行くんだろう? この辺りは危ないから送っていこうか?」
「いいの!? あっ、でも……、知らない人についていっちゃいけないって言われてるんだった。……けど、レオンならきっと良い人だから大丈夫よね……?」
猫ずきんちゃんはきちんと言いつけを思い出しますが、猟師さんと話し足りない故にそう聞きます。
「うーん……」猟師さんはそれを聞いて困ったように返しました。
「そんな簡単に人を信じてはいけないよ、ミリア」
「でも……」ここで別れたらもうこれから会える保障はありません。食い下がりますが、猟師さんは猫ずきんちゃんの目線に合わせてかがんで言います。
「きっとその言いつけをした人は、ミリアのことを大事に思っているんだ。だから、な」
猫ずきんちゃんは沙羅さんのことを思い出します。沙羅さんは、よく言い合いこそするものの年上として猫ずきんちゃんに色々なことを教えてくれる、大切な友だちでした。
切なそうに「うん……」と絞り出すと、猟師さんは「うん、良い子だ」と言って立ち上がります。猫ずきんちゃんは子ども扱いされたことに少しショックを受け、またこれから一生会えないかもしれないことにも悲しみました。
「そんな顔するなミリア。俺の猟師小屋はこの近くにあるから、いつかお母さんとおいで」
「わかったわ……。ありがとう、レオン」
猫ずきんちゃんは一人でもしっかり行けることを示して少しでも大人のレディに近づけたらと思い、「私、一人でも絶対大丈夫!」と言って見せました。
「ああ、頑張って。俺も小屋に戻るよ。じゃあ、またいつか」
猟師さんはその自信満々な様子が少し心配になりながらも、笑顔で猫ずきんちゃんを見送りました。
素敵な男の人に会えたこと、きっとまた会えるということにご機嫌な猫ずきんちゃんは、大好きなお母さんの歌を歌いながら進みます。図らずしも、それは初恋の歌でした。
ガーネットとサンゴも猫ずきんちゃんの歌が大好き。一緒に歌ったり聞き惚れたり楽しく過ごしました。
と、そんな猫ずきんちゃんを森から眺める一つの影がありました。
(あの子……。なんて綺麗な歌声なんだろう。それにすごく可愛らしくて健康そうで、食べたらきっと美味しいんだろうなぁ……)
悪いオオカミです! 不幸にも、猫ずきんちゃんの歌声に惹かれやってきてしまったのでしょう。
どうすればあの子を食べられるだろう……。そう考えていたら、猫ずきんちゃんが「なんだか疲れちゃった。ちょっときゅーけい」と言って近くの切株に座り込みました。
オオカミが猫ずきんちゃんと二匹の会話に耳を澄ませます。
「ママは今日この衣装でリハーサルをするのよね。この衣装、とってもオシャレ!」
「ミリアのママにとっても似合うわよね!」
(へえ、この子はミリアというんだ)オオカミは気配を殺しながらほくそ笑みます。
「スタジオまでの道は覚えてるにゃん?」
「もちろん! 何度も行ったことあるもの。このまま歩いて、町に出る直前で道を曲がればいいのよね」
「そうそう。ママ専用の楽屋があるから、きっとそこに居るはずよね」
「いぇーい! バッチリね!」
猫ずきんちゃんが自分の完璧さを再確認している一方、オオカミはあまりに都合のいい展開に歓喜しました。
(森の中には猫をおびき寄せる草がある。あれを取ってきて邪魔者を退かしたら、先回りしてやろう)
オオカミは計画を立てると、早速猫をおびき寄せる草を取りに行きました。
休憩を終えた猫ずきんちゃんは、このまま順調におつかいが終わることを疑わずにいました。また猟師さんのことを思い出しては、ママにもこの話を早くしたいな、などと夢見ておりました。
そうやって惚けていたからでしょう。ガーネットとサンゴが突然鳴き声をあげてどこかへ走り出したのに気づくのに、ワンテンポ遅れてしまいました。
「待って! 二匹とも急にどうしたの!?」
急いで追いかけますが、身軽な二匹の速さに追いつくのは猫ずきんちゃんにとって大変なことでした。仕方ないので、森に入っていった二匹を追いかけようとする時に、お母さんの衣装が入ったバスケットを森の入口に置いて走りました。
一生懸命追った先でガーネットとサンゴは、不思議な紫色の草に群がっていました。
「ガーネット、サンゴ……!」
焦点の合わない目をした様子のおかしい二匹を見て猫ずきんちゃんはたじろぎますが、名前を必死に呼びます。
「全然聞こえてないみたい……。一体どうすれば……そうだ! あかりに教えてもらったおまじない!」
猫ずきんちゃんは、近所に住む友だちのあかりちゃんに教えてもらったという「魔法のおまじない」を唱えます。
「えっと、てぃんくる・てぃんくる……ガーネットとサンゴ、戻ってきて……!」
気持ちをこめてガーネットとサンゴに届けると、二匹の瞳には宝石のような光が戻ってきます。
「ミリア……!」
二匹も猫ずきんちゃんの名前を呼び、「ありがとう」「突然ごめんにゃん」と謝ります。
「ガーネット、サンゴ……! よかった!」
猫ずきんちゃんは二匹を抱きしめます。二匹ももう不思議な草のことは一瞥もせずに、猫ずきんちゃんへ感謝を伝えました。
「なんだか不思議な草に引き寄せられてしまったけれど、ミリアのお陰で元に戻れたわ」
「いけない! ここは森の中にゃん。早く引き返すにゃん!」
そうして一人と二匹は元通り。
しかし、安堵のあまり猫ずきんちゃんは森の入口に置いていったはずのバスケットの存在を忘れてしまっていました。
オオカミがそれを持って先回りしていることも知らずに──。
猫ずきんちゃんはついにお母さんのいるスタジオに辿り着きます。
「意外と時間がかかっちゃったわね。ママ、待ってないといいけど」
ここまでの道のりを思い出して、やっと着いたことに心から安心しておりました。
楽屋に直行する猫ずきんちゃんでしたが、本当はお母さんはリハーサルのステージで待機しておりました。小さな小屋のようなものが乱立したスタジオで、楽屋とステージは別の建物になっていたため、それに気がつくことはできませんでした。
コンコン、と何も知らない猫ずきんちゃんが楽屋のドアをノックします。
「はあい」
「ママ、私よ!」
「ああ、ミリア。入ってきて」
猫ずきんちゃんは(ママの声、なんだかいつもより少し調子が悪いみたい……)と思いつつドアを開けました。
すると、中では衣装を着たお母さんが、顔を隠すようにソファに寝込んでいました。
「ママ! どうしたの? やっぱり調子がよくないの?」
「ミリア……来てちょうだい」
猫ずきんちゃんは体調の良くなさそうなお母さんを心配して近づきます。
一方、サンゴはガーネットの手を引いて「ねぇ、どうしてお母さんは衣装を着ているにゃん……?」と小声で恐る恐る尋ねます。
「えっ……。本当、ミリアが持っていたはずなのに……? 同じ衣装よね……」
ガーネットもサンゴの手を握ります。嫌な予感がしたのです。けれど、一体どういうことかわかりません。
「ママ、どうしたの? 耳が大きいし、手も大きい」
「ミリアの歌声をよく聴いて、抱きしめるためよ」
「……ママ、声もヘンよ。心配だわ、顔を見せて」
すると、オオカミはついに顔を見せます。
ガーネットとサンゴは声にならない叫びをあげます。
けれど猫ずきんちゃんはフフッと笑って、
「なーんだ、びっくりした! 被り物をしていたのね。ママ、目がとっても大きい!」
と呑気に言います。二匹は猫ずきんちゃんからママのような何かを引き離して逃げ出したいのに、足がすくんで動けません。
「ああ、ミリアをよく見るためよ」
おかしなところはたくさんあるのに、猫ずきんちゃんは何も気づきません。お母さんのことを信じて疑わないからこそでした。
「ママ、口もとっても大きいわ。どうしてオオカミの被り物なんて──」
「──お前を、食べるためだよ!」
猫ずきんちゃんが言い終わるか終わらないかのうち。
オオカミは、猫ずきんちゃんを一瞬で丸呑みしてしまいました。
ごっくんと飲み込んで、その質量に満足して寝転がります。「はぁ、食った食った」欠伸をして、眠たげでした。
ガーネットとサンゴは、暫く動けないまま立ち尽くしていましたが、やがてどっと汗をかいて顔を見合わせます。命を脅かす存在たるオオカミに気づかれないように、はくはく口を動かします。
焦って焦って、ガーネットは今にも発狂しそうでしたが、サンゴがその口を塞いで静かに静かに開いたままだったドアへ引き返します。
少し歩いたところで、やっと止めていた息を吐きだして二匹は叫びます。
「ど、どうしましょう! ミリアが、ミリアが……!!」
「何もできなかったにゃん……! ミリアを守らなきゃいけなかったのに……!」
「自分を責めないでサンゴ! まだミリアは死んでない! きっとあの中でまだ生きてる!」
「でもどうするにゃん!? 私たちだけじゃ……!」
ガーネットとサンゴは口々に言い合います。こんな絶望的な状況なのに二匹にできることは何も思いつきませんでした。
「──そうだ! そうよ! レオンとディアン!」
「レオンならミリアを助けられるかもしれないにゃん!」
「きっと猟師小屋よ、急ぎましょう!」
ガーネットとサンゴは、持てる最速のスピードで駆け抜けました。
小屋がどこにあるのか見当はついていませんでしたが、森の近くにあると言っていたのを思い出します。煙突から煙が出ているに違いないと思い、遥か高い上空に見える煙の元へ急いで向かいました。
猟師小屋のような場所に着くと、極めて注意しながら──しかしパニックのまま、二匹はドアを叩きました。
ドアから猟師さんとディアンが出てきます。下を見て、先ほど出会った二匹が女の子を連れずに涙目で立っていることに驚きます。
「助けて! ミリアが……!!」
猟師さんはまさか、と最悪の事態を察知します。
ディアンが上手く説明のできない二匹から話を引き出しているうちに、猟銃などを持って支度を整えました。ディアンは驚き焦りながら、二匹から引き出した情報を伝えます。
「どうやら、オオカミに丸呑みにされてしまったようだ……」
「……! 急いで、案内を!」
走り出すガーネットとサンゴに付いていきながら、猟師さんは後悔と焦りを募らせます。
(……っ。やっぱりあの時、送っていくべきだった……!)
こんな事態は彼にとっても初めてでした。猟師の家に生まれた彼は、一人前になって家を出て以来人との関りを自然と避けておりました。ディアンという自分を理解して支えてくれる猫さえいればよかったし、彼の美貌によって──幼少より人を惹きつけるかっこよさをしておりましたので──誰かを自分の危険な仕事に巻き込みたくないという優しさからでした。
それなのに今日の彼は、初めて会ったずっと年下の女の子によって久々に表情を柔らかくほぐされ、あろうことかまた会えるように約束めいたことをしてしまったのです。自分の珍しい行動がこんな凄惨な出来事を引き起こしてしまったのではないかとさえ思ってしまいます。
悪いのはオオカミです。それでも、猫ずきんちゃんを守れなかったことは猟師さんにとって堪えることでした。
「ここよ!」
ガーネットが息を切らしながらお母さんの楽屋である建物を示しました。
猟師さんは足音を立てないように注意しながら建物の周りを一周し、窓を見つけます。そこでは、おなかを膨らませたオオカミがぐうぐう寝ているのが見えました。
三匹の猫に頷いてみせると、ゆっくりドアを開けて室内に侵入します。
オオカミの側に辿り着いてみせた猟師さんは、持ってきた荷物の中からハサミを取り出します。これでオオカミのお腹を割くのです。三匹はできることがないので、必死に必死に猫ずきんちゃんが生きていることを祈るばかりでした。
緊張しながらオオカミの着ている服ごと厚い肉を割きます。すると、見覚えのある猫耳が覗きました。思わず猟師さんは「ミリア!」と名前を呼びます。ガーネットとサンゴも堪らず猫ずきんちゃんの名前を唱えます。
そのままオオカミのお腹を完全に切り開けば、中でうずくまる猫ずきんちゃんが現れました。どうやら気を失っていますが、息はしています。「生きている!」そう伝えて足元の三匹を安堵させます。
猟師さんは猫ずきんちゃんの体を掬い上げると、気を失っていた猫ずきんちゃんがゆっくり目を覚ましました。
「あれ、私……」
オオカミに食べられたというショックを思い出させないように、「少し外に出ようか」と言って横抱きしたまま楽屋の外に出ました。
猫ずきんちゃんは記憶が混濁していた様子でしたが、自分を見て泣いているガーネットとサンゴを見て思い出してしまいます。自分がオオカミに丸呑みされたことを。
その一瞬で感じた、自分は死ぬんだというこれ以上ない恐怖に対して、今やっと涙が出てきました。
「怖かった……! 私、死んじゃうんだと思って……!」
「ミリア、ごめんにゃん……!!」
「本当に、生きててよかった……!!」
自分の腕の中にいる小さな女の子が泣いている。そんな状況で猟師さんは、安心させたいという思いから猫ずきんちゃんを芝生に降ろすと抱きしめて背中をさすってあげました。
ディアンも「二匹がいたからこの子を助けることができたんだ」と言い励まします。
そうしているうちに猫ずきんちゃんは疲れてしまったようで、猟師さんに体を預けたままぐっすり眠ってしまいました。
ガーネットとサンゴも泣き止むと、「ミリアのお母さんを探してくるわ」と言って猫ずきんちゃんを猟師さんに託していきました。自分は信用されている──何を信じ何を疑うのか、その難しさを実感した猟師さんは責任を持ってミリアを預かりました。
やがて猫ずきんちゃんのお母さんがやって来ると、猟師さんは挨拶をしてから事情を説明しました。猫ずきんちゃんをお母さんに引き渡すと、「僕はオオカミを引き取ります」と断って楽屋に入っていきました。
未だにぐっすり眠っているオオカミを見て、(そういえば、この衣装はミリアのお母さんのものではないんだろうか)と気づきます。破けてしまったそれを一度丁寧に脱がしてからオオカミの体を背負いました。ここで仕留めることはできないため、森の奥まで運ぶのです。
「すみません、大切な衣装を……。僕が破ってしまいました」
オオカミを背に持ったまま楽屋を出て、猫ずきんちゃんのお母さんに頭を下げます。
「そんなことはいいのよ。私にとって一番大切なのはミリアなんだから。ミリアを助けてくれて、どうもありがとう」
その日のお母さんの仕事は中止になり、お母さんは猫ずきんちゃんを大事に大事に抱えてガーネットとサンゴと共に村へ戻ったのでした。猟師さんはそれを見て、自分にとって仕事より何より一番大切なものとは何かについて考えておりました。
その次の日、猟師さんがオオカミの皮を干した小屋の中で物思いに更けているとドアがノックされました。
ドアを開けると、そこには昨日振りの猫ずきんちゃんとお母さん、ガーネットにサンゴがおりました。
「昨日は本当に、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。すみません、まだオオカミの皮があるのですが……。それでも大丈夫ならどうぞ中へ」
猟師さんがこの猟師小屋の中に誰かを招き入れるのは初めてのことでした。ディアンも落ち着かない様子でガーネットとサンゴ用に小さなカップを奥から取り出します。
「レオン、改めて……。昨日は助けてくれてありがとう」
猫ずきんちゃんとお母さんが頭を下げると、慌てて猟師さんは「頭を上げてください」と言います。
「元はと言えば、僕がオオカミを取り逃がしていたからです」
「違うわ、悪いのは私を騙して食べたオオカミに決まってる。誰も、申し訳なく思う必要はないんだわ」
猫ずきんちゃんがきっぱり言い切ると、お母さんが続けます。
「……オオカミを許すことはできません。改めて、猟師さんにお礼を言わせてください」
「いいえ、僕は大切な衣装も破いてしまいました。その謝罪もきちんとさせてください」
「まぁ……。丁寧な人なのね。気にしないでいいのに」
お母さんは本当に気にしていない風だったので、猟師さんはいかに猫ずきんちゃんがこのお母さんに愛されているのかを感じました。
「ねぇママ。ほら、レオンはとっても良い人でしょう?」
「ミリア……。昨日も言ったが、そんなに簡単に人を信用するな。俺は現に、オオカミを殺しているんだ。必要なことであっても、何かを殺して生活しているんだよ」
まるで、自分と猫ずきんちゃんを隔絶するような言い方でした。ただ、それは心から猫ずきんちゃんを想って言っているのでした。もしここで猫ずきんちゃんと友人になってしまったら、また危険な目に遭わせてしまうんじゃないかと思っていたからです。
しかしお母さんは、猟師さんと猫ずきんちゃんを交互に見て口を開きます。
「私は……。ミリアに、自分の目で見てきたものを信じてきちんと判断してほしいと思っています。だからどうか、ミリアがあなたを信じることを許してほしいの」
「レオン、私はあなたがずっと私のためを想って行動してくれたのを知ってるわ」
その時猟師さんは気がつきます。自分の方が己を信じられていなかったのだと。猫ずきんちゃんを突き放したのは、自分を信じられていなかったからでした。
「ああ、そうだ……。ミリアのお母さん。僕は絶対に、ミリアをこれからも守り続けます」
(ミリアを拒絶するのではない。相応しい覚悟を持って、ミリアを危険な目には遭わせないよう守るんだ)
猟師さんの決意が固まりますが、それを見てお母さんはにこやかに笑います。
「ふふ、よかったわね、ミリア」
猫ずきんちゃんは男の人からそんなことを言われた経験もないので、猟師さんの言葉がプロポーズめいていたことには気がつきませんでしたが、ただただ嬉しくなりました。
「ありがとうレオン! でも私だって、きっとレオンを守ってみせるわ。私、これからもここに来てもいい?」
「ああ。もちろんだよ、ミリア」
ディアンは思います。猟師さんはもう随分猫ずきんちゃんのことが大切になっているんだなと。
心配するようなことはもう何もありませんでした。
それから。
猫ずきんちゃんはお母さんの仕事の忙しい日には猟師さんの元を訪れるようになりました。今まで出会ったことのない、友だちと呼んでいいのかわからない彼のことを、猫ずきんちゃんはまるで兄のように慕っておりました。
猟師さんは猫ずきんちゃんのために、小さな猟師小屋の中に猫ずきんちゃん専用の椅子やマグカップを作りました。猫ずきんちゃんを可愛がっているうちに、自分の面倒見の良さを初めて知りますが、それは猫ずきんちゃんが妹のようだからなんだと解釈しました。
ガーネットとサンゴ、それにディアンから見たら、お互い立派に惹かれ合っているというのに。「レオンにまた今日も子ども扱いされちゃった」「今日はミリアが来るだろうから、この辺りをしっかり見回っておかないとな」、なんて毎日のように聞かされるのですから。
いつの間にか猫ずきんちゃんは猟師さんにとって大切な心の拠り所になっていて、猟師さんは猫ずきんちゃんにとって安心できる友だち以上の存在になっていました。
気づいていないのは猫ずきんちゃんと猟師さんだけ。気づいた時にはきっと実る初恋を、今日も明日も育むのでした。
あとがき
これはレオミリなのか?と思いつつ、レオンと出会う前にあかりちゃんと沙羅さんに出会っていたミリアとか、ミリアに出会っていなかったレオンとかを考えるのが楽しかったです。なんか代わりといってはなんですがバリバリ恋させてしまった、♡♡
レオンが目上の人に僕+敬語になるの好き❣︎ペットの解釈がつかみきれていない感はどうにかしたいです🥺
多分あかりちゃんだったらもう少しオオカミさんに救いがあったのかなと思います🤔☁️悪いように扱ってゴメンネTT
途中から書きたいものが捻じれてしまってとんでもない纏め方になっているので、★★★★☆くらいかしら。。